月刊ニュータイプ2010年2月号 その正統なる系譜 OVA「機動戦士ガンダムUC」メカニカルデザイン・玄馬宣彦インタビュー 要約版
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連なる系譜から受け継ぐ“こだわり”
――宇宙世紀という時間軸の中、さまざまな作品がつくられたきた「機動戦士ガンダム」の世界。アムロ、シャア、ブライトら、主要な登場人物の生きざまを数多くの作品を通して俯瞰できるのも、“宇宙世紀ガンダム”ならではの楽しみだ。そして、それは登場するMSに関しても言えること。そこで今回は公開迫る「機動戦士ガンダムUC」のMSにフォーカス。その系譜を過去の名機とともに振り返りつつ、メカニカルデザインを担当する玄馬宣彦に「UC」での見どころを聞いてみた。
玄馬:まず見てほしいのが、MSの動きですね。「UC」では、動きのルールを1991年に公開された劇場版「機動戦士ガンダムF91」のものに準じ、あえて動作にタメをつくりメリハリを付けるようにしました。最近のガンダム作品と比べると遅いと感じるかもしれませんが、旧作を知っている人には懐かしさを感じてもらえるはず。それにこの先登場するMSがどんどん速くなっていくのがわかってますからね、これくらいにしておかないと、後々大変なことになってしまう。
――こだわったのは動きだけではない。メインメカデザイナーであるカトキハジメのアートワークをそのまま映像化するために、着色にもある大胆な決断をしたのだという。
玄馬:「機動戦士ガンダムSEED」や「機動戦士ガンダム00」などは、ハイライト部を過剰に強調するというテクニックを多用しているのですが、「UC」ではこれを禁止しました。ハイライト部を強調すると、画の密度感が上がり、動きの破綻が目立ちにくくなりますが、それではカトキさんのイメージは出せません。細かいパーティングラインを影処理にしてもらうなどして、よりカトキハジメ風の仕上がりを目指しています。一見すると1980年代風の仕上がりなんですが、そこは単なる先祖返りにならないよう、装甲の継ぎ目のフレーム部分にはハイライトを入れるなど、工夫しています。こんな手の込んだことをできるのは後にも先にも「UC」だけ。TVでは絶対にできなかったクオリティだと思いますよ。
メカニカルデザイン・玄馬宣彦による、OVA「機動戦士ガンダムUC」第1話登場の全MS解説
RX-0 ユニコーンガンダム(デストロイモード)
玄馬:アニメ化に際して福井先生からの要望もあり、デストロイモードがよりマッシブに見えるよう、デザインを調整しています。
NZ-666 クシャトリヤ
玄馬:一番苦労したのが袖部分。小さくするとつぶれてしまうので、ここだけ色トレス処理にしています。
AMS-129 ギラ・ズール
玄馬:本作におけるやられメカという位置付けではありますが、最初からやられすぎると、弱さばかりが際立つので、第1話では連邦軍MS相手にそれなりに活躍させてもらうようお願いしました。
RGZ-95 リゼル
玄馬:実際はジムっぽい顔をしてるんですが、原画スタッフには、Ζガンダムの後継機であることを意識して顔を描くように指示しています。
RGM-89 ジェガン
玄馬:ジムをベースにしたMSという設定なんですが、足のふくらはぎのラインなんかは、むしろジオンのMSに近いシルエット。逆にギラ・ズールの足は連邦っぽい。そういうところも面白いですよね。
D-50C ロト
玄馬:この時代、小型MSに通常MSと正面から渡り合えるほどの性能はない。それをECOASがどのように運用していくかに注目を!